ラスト・ジョーカー

*第三章 銀の鈴 3*


 アレンがエルたちに同行するようになってから、二日が経った日の朝。



「ゼンの旦那ー、〈ハナブサ〉まであとどれくらいかかると思うよ?」



 朝食の支度を整えるゼンに、自前の干し肉をかじりながら、アレンが訊いた。



 アレンは最初に宣言した通り、食事の世話はすべて自分でこなした。


もちろん、進路についての意見や文句も一つも言わない。


お調子者でよくしゃべるが、ゼンはそれをうるさがりはしても、当初の約束は守っているので同行を拒否したりはしなかった。



「〈ハナブサ〉から〈ユウナギ〉に来たときは五日くらいかかったから、たぶんあと三日くらいじゃないか?

もっとも、最近は砂漠生物の出現が少なくて順調に進んでるから、もっと早く着けるかもしれないが」



 ゼンが言った通りに、砂漠ハエジゴクは最初の一匹を殺して以来、現れたのは昨夜の一匹だけだ。


それも一匹目との戦闘でコツをつかんだエルによって瞬殺された。


これであと二日程度は砂漠生物に出くわさないだろう。



「じゃあ、あとちょっとか。水と食糧も足りそうだし、ゼンの旦那に世話にならなくて済みそうだ。やったね」



「やったね、じゃねえよ。途中で食糧足りなくなっても世話なんかしねえし、そもそも旦那って何だよ」




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