ラスト・ジョーカー
「ただの石ころじゃない。浄化石だ」
「浄化石?」
「水に入れたら、水中のごみやちり、人体に有害な細菌なんかを取り除いてくれる」
「へえ、そんなのあるんだ」
感心したように言って、エルは石をしげしげと眺める。角がなくて丸っこい、真っ白な石。
見た目には普通の石に見えるが、なんだろう、なにか生命の気配のようなものを感じる、とエルは思った。
生き物ではないが、生き物の力を宿しているような気配。
「で、川はどっちだ?」
ゼンが訊いた。肩にはボトルの入った鞄をかついでいる。
水を汲みにいく気だろうか。
「んっとね、……あっちにまっすぐ行ったらあるよ」
耳をすまして、エルは川がある方向を指差した。
ゼンはそちらを見て、チッと舌打ちをする。
「道がそれるな。ここからどれくらいかかるかわかるか?」
「一時間もあれば往復できるくらいかな。あたし行こうか? たぶんあたしが走って行ったほうが早いよ」
エルの提案に、ゼンはしばらく考えるそぶりを見せたが、やがて「いや、いい」と首を横に振った。
「どうして? あたし、逃げたりしないよ?」
「ばか。砂漠生物の退治とか、野鳥仕留めたりとか、全部おまえがやってるだろ。女にばっか任せてられるか」