ラスト・ジョーカー
4
*第三章 銀の鈴 4*
「ねー、エルちゃんさん」
ゼンの姿が見えなくなってしばらくして、アレンが声を上げた。
呼び方がすこし変だったが、エルはそこには触れず、「なに?」と返す。
「あのさー、エルちゃんさんはさー、ゼンの旦那とどういうご関係? 主従なの? もしかして恋人だったりしちゃう?」
もしゃもしゃと干し肉をかじりながら、アレンが訊いた。
エルは苦い顔をして、「えっと、じつはあたしにもよくわかっていないんだなー。まあ、恋人ではないとは言える」と答えた。
「わかんないの?」
「うん。べつに、ゼンがあたしのご主人ってわけでもないし、かと言って友達ってのも違うと思うし。
あたしはただ、旅についてきてほしいって言われたから、ついていってるだけ」
「ふーん。エルちゃんさんは、本当は旦那のとこ離れて他に行きたい場所とかないの?」
そう訊かれて、浮かんだのはスメラギの顔だ。
多少の不自由はあるが快適な生活を提供するとエルに言った男。
〈トランプ〉の日本支局局長。
「ないわ」
頭の中に浮かぶ顔を振り払うように、エルはふるふると首を振った。
「ほんとはね、ゼンについていかなくても行く当てはあるの。でもあたし、こっちの方がいい。
あたしは快適な生活なんかよりも、広い世界を見たい。すこし大変でも、自分の足で歩ける今の生活が好き」
それに、ゼンはあたしを化け物として見ないもの。
と、エルは内心で付け加えた。
「ねー、エルちゃんさん」
ゼンの姿が見えなくなってしばらくして、アレンが声を上げた。
呼び方がすこし変だったが、エルはそこには触れず、「なに?」と返す。
「あのさー、エルちゃんさんはさー、ゼンの旦那とどういうご関係? 主従なの? もしかして恋人だったりしちゃう?」
もしゃもしゃと干し肉をかじりながら、アレンが訊いた。
エルは苦い顔をして、「えっと、じつはあたしにもよくわかっていないんだなー。まあ、恋人ではないとは言える」と答えた。
「わかんないの?」
「うん。べつに、ゼンがあたしのご主人ってわけでもないし、かと言って友達ってのも違うと思うし。
あたしはただ、旅についてきてほしいって言われたから、ついていってるだけ」
「ふーん。エルちゃんさんは、本当は旦那のとこ離れて他に行きたい場所とかないの?」
そう訊かれて、浮かんだのはスメラギの顔だ。
多少の不自由はあるが快適な生活を提供するとエルに言った男。
〈トランプ〉の日本支局局長。
「ないわ」
頭の中に浮かぶ顔を振り払うように、エルはふるふると首を振った。
「ほんとはね、ゼンについていかなくても行く当てはあるの。でもあたし、こっちの方がいい。
あたしは快適な生活なんかよりも、広い世界を見たい。すこし大変でも、自分の足で歩ける今の生活が好き」
それに、ゼンはあたしを化け物として見ないもの。
と、エルは内心で付け加えた。