ラスト・ジョーカー

*第三章 銀の鈴 5*



 エルが往復一時間と言った通りに、目当ての川はきっかり三十分ほど歩いたところで見つかった。


ゼンは小川の前でかがんで、持ってきたボトルに浄化石を一つずつ入れると、川の水を汲みはじめる。



 川は狭く浅く、水は周囲の砂を含んで汚かった。


すこしずつボトルに溜まっていく水をみているうちに、なぜこんな砂漠に川が流れているのか、この川がどこにつながっているのかと、疑問が湧いてきた。



 そして、そんな疑問を持った自分にゼンは驚いた。

〈ユウナギ〉に来るときには、不思議ともなんとも思わなかったことだ。



 〈裁きの十日間〉以来エリア外の土地をことごとく覆ってしまったこの砂漠は、砂漠と呼ばれているにもかかわらず、昼に暑くも夜に寒くもならない。


オアシスなど探しても見つからないのに、まれに川が流れていることがある。


考えてみれば妙なことだが、都合良くできているものだな、という程度の認識しかゼンは持たなかった。


昔はそういった不自然な現象をいちいち不思議がっていたが、今ではすっかりそれに慣れてしまった。


いつからか、世界は狂ってしまったのだと認めて、現象に説明を求めるのを諦めてしまっていたのだ。



 それを、今さら不思議がるなんて。



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