ラスト・ジョーカー

「おまえ、どうしてここに」



　ゼンが尋ねると、カンパニュラはふふ、と笑って、

「ゼンがどうしているかがふと気になったから様子を見にきたのよ」

　と、答えた。




　とたんに、ゼンの表情が険しくなる。



「なぜそんなものが気になる」



「なぜそんなことを訊くの？ 気になる、というのは自然発生的な感情だもの。どうしてかなんて、わたしにもわからないわ」



「誰かに言われておれを監視しているという可能性も考えられると思うが？」



　ゼンがそう言うと、カンパニュラはなぜだがいっそう笑みを深くして、



「誰かというのは〈トランプ〉のことかしら？」

　と、言った。



　その言葉に、ゼンは息を飲む。



「やはり、〈トランプ〉の――」

「違うわ」



　カンパニュラがゼンの言葉を遮って言った。



「〈トランプ〉とまったく関係がないわけではないけれど、わたしは〈トランプ〉の者じゃない。

彼らに追われているあなたが、得体の知れないわたしを警戒するのはわかるけれど、疑うべきはわたしじゃないわ」



　それを聞いてもなお、ゼンは疑わしげな顔をしていたが、諦めて別のことを尋ねた。