ラスト・ジョーカー



「おまえのその、白い髪は、生まれつきなのか?」



 以前会ったときも、訊きたかったがその余裕がなくて訊きそびれてしまったことだ。


ゼンと同じ白い髪。

それは生まれつきのものなのかどうか。

ゼンはこれまで世界中を旅してきたが、老人以外で白い髪の者に出会ったことはなかったのだ。



「いいえ」



 カンパニュラは笑みを引っ込め、静かに言った。



「もうずっと昔からこんな色だけど、もともとのわたしの髪は淡い青紫だったのよ。

……せっかくあの人がきれいと言ってくれたのに、こんなに真っ白になってしまったわ」



 後半の言葉を乗せたカンパニュラの声は、細く震えて今にも消えそうだった。


「あの人」とは誰のことなのか気になったが、カンパニュラの伏せたまぶたがひどく悲しげだったので、なんとなく訊いてはいけないような気がして訊けなかった。



 代わりに「どうしてそんな色になった。いつから?」と尋ねた。



 すると、少女は再び笑みを浮かべて、

「年がばれちゃうから、いつからかは秘密。髪が白くなった理由は、……あなたと同じよ」

 と言った。



「おれと同じ? どうしてそうわかる」



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