ラスト・ジョーカー
「初めて会ったときに、あなたの髪がわたしと同じだったから気になって、調べてみたの。わたし、人脈だけは広いのよ」
いたずらっぽく笑って、カンパニュラは右目をつむってみせた。
その言葉から、カンパニュラがゼンの「秘密」を誰から聞いたのかは容易に察せられた。
「秘密」を知る人物に、ゼンは一人だけ心当たりがあった。
もう五年ほど会っていないせいで朧げな面影を、頭の中に浮かべる。
あいつ、次会ったらぶん殴る。と、ゼンは密かに決心する。
次に会うのはいつになるかわからないが。
「ねえ、ゼン」
頭上から声が降ってきたので顔を上げると、PKを使っているのだろう、カンパニュラが空中に浮かんでゼンを見下ろしていた。
「いいことを教えてあげるわ」
ふよふよと空中を漂いながら、少女が言った。
ゼンが投げやりに「なんだ」と問うと、細い指でまっすぐに川の向こうを指す。