ラスト・ジョーカー

*第三章 銀の鈴 6*


 エルとアレンのもとに戻ったゼンは、すぐに二人を連れて、隊商が野営しているとカンパニュラが言っていた方へ向かった。



 ゼンが水を汲んだ小川を越え、砂漠を進む。


相変わらず植物もなく羽虫一匹いない、無機質な砂の大地だ。


ずいぶん長いこと歩いて、やはりカンパニュラは嘘をついていたのではなかろうか、とゼンが思い始めた頃。エルが「あれ?」と声を上げて立ち止まった。



「どうかした?」



 と、アレンが問うと、エルは耳と鼻をひくつかせて、


「うん……あのね、火の燃える音と、人の話し声がする。たくさんいるよ。それから、馬? かなあ。なにか動物の匂いも」


 その言葉にゼンが目を見開いて、「本当か!?」と問うと、エルは頷いた。



「方向はこっちで合ってるよ。まっすぐ進めば着く。けど……」



 エルはそこで黙り込んだ。


なにか、異質な音がする。


少し遠くの、隊商の野営地にで、なにかが起ころうとしている。


エルはしゃがみこんで、耳に神経を集中させた。



(いろんな音がする……)



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