ラスト・ジョーカー




 そうこうしているうちに砂煙は晴れていく。


ついに露わになった「それ」を見て、エルは目を見開いた。



 太く赤黒い茎。


その先端についた葉のようなものからは、無数の赤い突起が伸びている。


エルの脚に絡みついているのはその突起だった。


見渡すと、「それ」は一体だけではなく、砂の大地から無数に生えていた。



「なによ、これ……!」



 エルが悲鳴のような声を上げたとき。



「おーい、エルちゃんさーん!」



 下方からアレンの声がした。


視線を下げると、緑の蔓に絡みつかれた透明な四角い結界が見えた。


その中には笑顔で手を振るアレンと、憮然とした表情のゼンがいる。



 とりあえず、二人は無事だ。エルはそのことにほっと胸をなでおろした。



 アレンは化け物を指差して、

「これ、砂漠モウセンゴケっていうんだけどー!」

 と、にこにこしながらエルに向かって叫ぶ。

緊張感の欠片もない。



「モウセンゴケ?」


「うん。ハエジゴクよりもずっとレアで、めったに現れないらしい。でも現れたら厄介で、腺毛で捕らえられたら粘液で身動きを封じられる。今のエルちゃんさんみたいに」


「弱点は?」



< 95 / 260 >

この作品をシェア

pagetop