ラスト・ジョーカー
そうこうしているうちに砂煙は晴れていく。
ついに露わになった「それ」を見て、エルは目を見開いた。
太く赤黒い茎。
その先端についた葉のようなものからは、無数の赤い突起が伸びている。
エルの脚に絡みついているのはその突起だった。
見渡すと、「それ」は一体だけではなく、砂の大地から無数に生えていた。
「なによ、これ……!」
エルが悲鳴のような声を上げたとき。
「おーい、エルちゃんさーん!」
下方からアレンの声がした。
視線を下げると、緑の蔓に絡みつかれた透明な四角い結界が見えた。
その中には笑顔で手を振るアレンと、憮然とした表情のゼンがいる。
とりあえず、二人は無事だ。エルはそのことにほっと胸をなでおろした。
アレンは化け物を指差して、
「これ、砂漠モウセンゴケっていうんだけどー!」
と、にこにこしながらエルに向かって叫ぶ。
緊張感の欠片もない。
「モウセンゴケ?」
「うん。ハエジゴクよりもずっとレアで、めったに現れないらしい。でも現れたら厄介で、腺毛で捕らえられたら粘液で身動きを封じられる。今のエルちゃんさんみたいに」
「弱点は?」