ラスト・ジョーカー
「先っちょの捕虫葉の内部に弱点の目玉がくるまれてて、一体でも目玉を傷つければ群ごと退散してくれるらしい」
なるほど。エルは脚をつかんで放さないモウセンゴケの捕虫葉を睨みつけた。
(要はこれをかっさばいて目玉を潰せばいいわけね)
そう納得するやいなや、エルはナイフを持った手を振り上げた。
そして勢いよく捕虫葉に突き刺す。
そのまま切り開こうと手を下に引いたが、とたん無数の腺毛が腕に絡みついて強い力でナイフを引き抜こうとする。
エルは必死で抗ったが、勝てなかった。
ナイフはエルの手から奪われ、地に放り出された。
「あ……っ!」
エルは真っ青になって落ちたナイフを目で追った。
そのとき、ゼンとアレンのいる結界が目に入った。
蔓にぐるぐると巻きつかれ、おそらく締め付けられているのだろう。
結界がわずかにゆがんでいた。
その中にいるゼンもアレンも、険しい顔をしている。
ゼンの唇が動いた。――くそっ、もうもたない!
その言葉と同時に、結界に大きくひびが入った。
それがさらに蔓に締め付けられ、完全に砕け散る。
アレンはその蔓に捕らえられ、ゼンは弾き飛ばされた。