ラスト・ジョーカー
「ゼンッ! アレン!」
エルは叫んでもがいた。
だが今や脚だけでなく腕にも巻きついた腺毛は絡まって取れない。
早くこれを倒して、アレンを助けて、ゼンが無事か確かめなければ。
だが、焦ってもがけばもがくほど腺毛は複雑に絡まっていく。
「ゼン! ゼン、無事なの? 返事をして!」
もがきながら、エルは首を巡らせてゼンを探す。
ふいに、ケホ、と小さな咳の音が聞こえて、エルはそちらに視線を向けた。
砂まみれになったゼンが、咳き込みながら起き上がるところだった。
よかった。無事だ。
そう安心したのも束の間。
立ち上がったゼンにモウセンゴケは蔓を伸ばし、ゼンを捕らえるかと思いきや――ゼンを、なぎ払った。
「ゼン―――!」
エルは絶叫した。
ゼンの体は吹き飛ばされ、砂の上に転がる。
――そして、動かなくなった。
そんな。どうして。
あたしやアレンは捕まえようとするのに、どうしてゼンだけにあんな。
ゼン、ゼン。どうして動かないの。どうか無事でいて。
いや、あんなのくらって普通の人が無事でいられるわけない。
でも、まさかそんな。そんなわけない。
気を失っているだけ。でも、でも。