愛を知る小鳥
週末のその日、残業のため美羽はいつもよりも随分遅い帰宅となっていた。
最近痛いほど潤の視線を感じる。自分の中の何かが変化したことを彼は気付いている。だから彼は怒っているのかもしれない…。それも当然だ。あれだけお世話になっておきながら、あからさまに距離を置こうとしているのだから。
もう何度目になるかわからない溜息をつきながら、重い足取りで家路を急いだ。
アパートが見えるところまでやって来た頃、ふと何か違和感に気付く。遠目ではっきりとしないが、階段付近で人が立っているように見えた。こんな時間に誰かと待ち合わせだろうか? 疑問に思いながら少しずつアパートへと近づいていく。
しかしそこにいる人物がはっきり見えるようになった時、美羽の足は硬直した。
「美羽ちゃん…!」
それはまるで悪魔の囁きのようだった。
「そ……の、ださ…」
喉がカラカラに貼り付いて、まともに声を出すこともできない。
「こんな所で待っててごめん。でもなかなか会えるチャンスがなくて…悪いと思ったけど、何度か仕事帰りに様子を見させてもらったんだ」
一歩、一歩、悪魔が近づいてくる。
それなのに金縛りにあったように、指先一つ動かすことができない。
「この前は驚いたよ。まさかあそこで働いてたなんて…でもこうやって再会できたのも何かの」
「来ないでっ!!」
あと少しで手が届く程の距離まで近づいて来たとき、美羽はようやく自分を取り戻した。
「美羽ちゃん、そんな大きな声出さないで。何も変なことなんて考えてないから」
「いやあっ! こないでーーーーっ!!!!!」
ゆらりと伸びる悪魔の手。
ニゲテ、ハヤクニゲテ
アクマニタベラレチャウヨ_________
最近痛いほど潤の視線を感じる。自分の中の何かが変化したことを彼は気付いている。だから彼は怒っているのかもしれない…。それも当然だ。あれだけお世話になっておきながら、あからさまに距離を置こうとしているのだから。
もう何度目になるかわからない溜息をつきながら、重い足取りで家路を急いだ。
アパートが見えるところまでやって来た頃、ふと何か違和感に気付く。遠目ではっきりとしないが、階段付近で人が立っているように見えた。こんな時間に誰かと待ち合わせだろうか? 疑問に思いながら少しずつアパートへと近づいていく。
しかしそこにいる人物がはっきり見えるようになった時、美羽の足は硬直した。
「美羽ちゃん…!」
それはまるで悪魔の囁きのようだった。
「そ……の、ださ…」
喉がカラカラに貼り付いて、まともに声を出すこともできない。
「こんな所で待っててごめん。でもなかなか会えるチャンスがなくて…悪いと思ったけど、何度か仕事帰りに様子を見させてもらったんだ」
一歩、一歩、悪魔が近づいてくる。
それなのに金縛りにあったように、指先一つ動かすことができない。
「この前は驚いたよ。まさかあそこで働いてたなんて…でもこうやって再会できたのも何かの」
「来ないでっ!!」
あと少しで手が届く程の距離まで近づいて来たとき、美羽はようやく自分を取り戻した。
「美羽ちゃん、そんな大きな声出さないで。何も変なことなんて考えてないから」
「いやあっ! こないでーーーーっ!!!!!」
ゆらりと伸びる悪魔の手。
ニゲテ、ハヤクニゲテ
アクマニタベラレチャウヨ_________