愛を知る小鳥
「…目が覚めたか?」

「…せん、む…?」

白い光に目を窄めながらゆっくり瞼を動かすと、心配そうに覗き込む潤と目が合った。

「私…どうして…」

「お前の電話で飛んでいったんだ。本当に生きた心地がしなかったよ。…怪我したところは大丈夫か?」

目だけを動かしてみればこの景色には見覚えがあることがわかった。
…そうだ。以前も同じようなことがあった。ここは専務の部屋だ。
じゃあ何故またここに…? 昨日は残業で遅くなって…
そこまで考えた美羽の顔が一瞬で青ざめたのを潤は見逃さなかった。そしてすぐに震える手を両手で包み込む。美羽は今までとは違うその行動に驚きを隠せない。

「夕べ一体何があったんだ」

美羽はさらに青ざめ、潤から視線を逸らした。だが潤は美羽の顔に両手を添えると自分の方へ向かせ、視線を逸らすことを許さない。

「美羽。昨日あったことを話して欲しい」

美羽は静かに首を横に振った。

「…ごめんなさい…私が電話してしまったばかりにまた巻き込んでしまって…」

「そんなことはどうでもいい」

「…今回のことも感謝しています。自分で連絡しておきながら勝手なのはわかっています。…でももうこれ以上は迷惑をかけられません」

そう言って帰るために体を起こした美羽を潤は抱きしめた。美羽は驚きの余り硬直してしまう。

「美羽…俺はお前を…美羽を守りたいんだ」

「な、にを言って…」

潤は力を緩めほんの少しだけ体を離すと、片手を頬に添えて真正面から美羽を見つめながら言った。



「お前が好きだ」



美羽の瞳がこれまでで一番大きく見開かれた。そして次第に小刻みに震えだし、緩んできた涙腺に耐えようと唇を噛みしめた。

「美羽、お前が好きだ。だからお前のことを守りたい」

美羽の瞳からポロリと一粒の滴が零れ落ちる。
潤は再び美羽を胸の中に閉じ込めると、抱きしめるその手に力を込めた。そして美羽の耳元で何度も何度も好きだと囁いた。
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