愛を知る小鳥
「違うんです…専務には何一つ問題はないんです…。私が…私は専務にふさわしくないんです…」

潤は体を離すと両手で美羽の顔を包み込み、目の前まで顔を近づけた。

「美羽。俺にふさわしいかふさわしくないかを決めるのは誰なんだ? お前か? 他人か? そうじゃないだろう? 俺自身だ。俺がお前を選んだんだ」

美羽の瞳から溢れる涙はもう止まることはない。潤は親指でその涙を拭いながらさらに続けていく。

「俺が人生で誰かを守りたい、愛したいと思ったのは後にも先にもお前だけだ。それでもお前はふさわしくないというのか? …お前が好きなんだよ。お前を守りたいんだ。だから迷わないで信じて欲しい」

震える美羽の瞳に戸惑いはあれど、最近感じていた拒絶の色はどこにもなかった。潤は彼女の呪縛を解くように、額にそっと口づけた。美羽がビクリと肩を揺らしてもやめることはなかった。
優しく、優しく、囁きかけるように口づけていく。


瞼に、鼻に、頬に、耳に、



……そして唇と唇がそっと触れた。


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