愛を知る小鳥


それはまるで全身に電流が走ったような衝撃だった
人生でこんな経験一度たりともない
ただ唇と唇が触れあうだけの、ただそれだけの行為が
今までの人生もこれからの人生をも、
全てを変えてしまうだけの凄まじい力を放っていた______




一瞬とも永遠とも思える時間を感じた後、触れ合っていた唇がそっと離れた。
美羽はただ呆然と固まっていた。いつの間にか涙は止まり、震えもおさまっている。潤は愛おしげにその頬を撫でると、もう一度チュッと啄むようなキスをした。

「俺の本気は凄いから。もう離さないから覚悟して」

そう宣言すると、もう一度美羽を抱きしめた。


美羽は何が起こっているのか理解できていなかった。
私は今何をした…? 今何をしている…?
…よくわからない。
でもとても心地いいことだけはわかる。
ゆらゆらと、母親の胎内にいる時はこんな感じなのだろうかと、ふわふわ浮いていくような感覚にどこまでも包まれていくのを感じていた。


「…美羽?」


気配がどこか変わったのを感じ顔を覗き込むと、彼女は眠っていた。気を失ったのではない。眠っているのだ。呼吸も整い、どこか安心したように子どものような顔で眠っている。潤はそんな彼女がたまらなく愛おしく思い、またほんの少しでも安らぎを与えることができたのなら…と心の底からホッとした。
そのままベッドに寝かせると自分もその隣に潜り込み、もう一度そっとキスをして再び包み込むように抱きしめる。

「おやすみ…」

優しく耳元でそう囁くと、やがて潤も静かに目を閉じた。
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