愛を知る小鳥
それからリビングへ行くと、その先のキッチンでいつかと同じように潤が朝食の準備をしている。美羽はためらいながらもそこに近づくと、ぎこちなさを残したまま小さく呟いた。

「あの…お手伝いさせてください」

声に振り返った潤は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに破顔して頷いた。それから広いキッチンに二人並んで朝食を作った。ほとんど一方的に潤が話すだけだったが、美羽の中にあった緊張やぎこちなさは自然と解けていった。
やっぱり彼の傍はとても心地がいい…そんなことを感じながら。


「美味そうなのができたな。よし、じゃあ食べるか」

「…はい。いただきます」

二人で初めて作った朝食はどれも簡単なものばかりだったけれど、今まで食べたどんな高級なものよりもおいしく感じた。口に運びながら言葉にできない想いが込み上げてきて、気がつけば美羽の目からは涙が零れていた。

「___っ、どうした?! どこか痛いのか?」

泣いていることに気付いた潤は慌てて席を立つと、美羽の目の前に移動して膝立ちで顔を覗き込んだ。

「ちっ、違うんです! なんだか、すごくあったかい気持ちになって…それでっ…ごめんなさいっ」

「……」

泣きながら首を振って謝る美羽をそっと腕の中に引き寄せる。

「なんで謝る必要がある? 素直に喜べばいいんだ。それに…そういう気持ちを何て言うか知ってるか?」

体を離すと美羽は意味がわからないのか首を横に振ってみせる。潤はそんな彼女の手を取るとギュッと握りしめた。

「それを幸せと言うんだ」

「しあ、わせ…?」

「そうだ。俺はお前にこれからそういう幸せな気持ちをどんどん味わってもらいたいと思うし、それを与えてやるのは自分でありたいと思ってる。…だから」

真剣な眼差しに美羽は吸い込まれそうな感覚を覚えていた。



「だから。昨日あったことを話してくれないか」


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