愛を知る小鳥
これまでは自分の意識のない間に物事が進んでいたけれど、今は何が起こっているのかはっきりと認識している。肩と肩が触れ合うほどの距離で異性とベッドに寝ているなんて…。このままでは緊張で寝るどころではない。今にも心臓が張り裂けそうだ。

「お前な~、緊張しすぎだろ。何もしないから安心して寝ろって」

半分呆れたように言われてしまうがそんな問題ではないのだ。

「そんなこと言っても無理ですよ! 私にとってはこういうことは普通のことじゃないんです…!」

必死になって美羽は反論する。

「…そんなの俺だって同じだっての」

「え?」

だって、彼は今までたくさんの女性とお付き合いがあった人だ。こうやって誰かと一つのベッドに入ることなんて何でもないに違いないに決まってる。
…そう考えると何故か胸がチクリと痛んだ。

「…自慢じゃないがこうやって女と朝まで一緒にいるなんて後にも先にもお前しか経験したことないんだよ」

「…へ?」

彼は一体何を言ってるんだろうか。思わず間抜けな声が出てしまう。

「その…まぁなんだ。付き合いのある女はそれなりにいたが、誰とも朝まで一緒にいた奴はいない」

珍しくバツが悪そうに話す彼はどこか照れているようにも見える。

「それって…」

「あぁもう、お前は一体何を言わせるんだよ! いいからさっさと寝ろ!」

「きゃあっ?!」

照れくささを誤魔化すように潤は美羽の体を強引に引き寄せ、自分の胸の中に閉じ込めた。

「ちょっ、ちょっと専務!! お話が違いますっっ!」

「だから変なことはしないって言ったろ? 添い寝してやるだけだ。寝るまで見ててやるから」

「ちょっ…!」

反論しようとする美羽の背中に手を回し、いつものようにポンポンと叩いて摩り始める。するとまるで魔法にかかったかのように美羽の心が一気に凪いでいった。これまでの疲れもあるせいで、長く待たずにトロンとし始める。抵抗していたのも最初だけで、あまりの心地よさに次第に微睡み、そしてやがて安らかな眠りの世界へと落ちていった。
潤はそんな美羽を見てフッと笑うと、そっと口づけをして自分も眠りについた。
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