愛を知る小鳥
風呂から上がってリビングに行くと、潤がソファーに座って軽く飲んでいた。彼が家で飲んでいる姿を見るのは初めてのことだった。

「あの、お先にお風呂いただきました」

「あぁ」

「…」

やっぱりあれからどこか微妙な空気が漂ってしまっている。彼の視線を感じるが、そちらを見る勇気もない。沈黙に耐えられなくなってしまった美羽は、なんとか笑顔を作ってみせた。

「じゃあ、お先に失礼しますね。おやすみなさい」

「…おやすみ」

言うが早いかさっさとリビングを後にする。最後の最後まで彼の視線を痛いほど感じていた。部屋に入ると思わず大きな溜息がでた。
なんだか悪いことをしているような気分になってしまう…
…駄目駄目! そうやって流されないためにも一人になる時間は必要!
美羽は自分に言い聞かせるようにベッドに潜り込み、ギュッと目を閉じた。




***


「ふぁ…」

「あれ、香月さんのそういう姿って珍しいね。寝不足?」

資料をまとめながら思わず出てしまったあくびを思いっきり成田に目撃された。ばつの悪さに苦笑いすることしかできない。

「いえ……はい、夕べちょっと遅くまでテレビを見てしまって」

「へぇ~、香月さんがテレビで夜更かしって何か意外だね」

「はは…」

そりゃあ意外に決まってる。嘘八百なのだから。テレビなんてせいぜいニュースを見るくらいでつけることすらめったにない。
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