愛を知る小鳥
「俺は自分の人生に意味を持たせたくて、親父を見返したくてただ突っ走ってただけだったんだな。希望通りの人生を歩んでるはずなのに、一度も満たされた気持ちになったことはなかったよ。今ならわかる。…俺は飢えてただけなんだな。…愛情ってやつに」

指で何度も拭われているはずの涙はずっと乾くことはない。

「俺は愛され方も、愛し方もろくに知らずに育ってきた。そんな俺でも生まれて初めて誰かを愛したいって思えたんだ」

「せ、んむ…」





「 お前を愛してる 」





真っ直ぐな瞳と言葉が心を貫く。
この瞳に、言葉に、誰が抗うことができるというのだろうか。
少しずつその瞳が近づいてくる。
でもそれから逃げることなんてもうできない。

互いの唇が引き寄せられるように触れ合う。
触れた先から全身に熱が伝わる。
触れては離れ、また触れては離れ、何度も何度もその感触を確かめる。
やがて背中に回る手に力がこもり、激しく引き寄せられた。

「んっ、ぁっ…!」

あまりの強さに息苦しくなり、呼吸をしようと口を開いた瞬間差し込まれる生温かい感触。瞬間ビクリと体を震わせるが、それ以上何も考えられないほど激しく求められる。背中と後頭部に手を回され、何度も角度を変えながら侵入してくる。及び腰な美羽の舌を探し出し見つけては絡めて離さない。
それはまるでお前を逃がさないと言われているようで_____






おちていく…

彼におちていく___________






美羽は初めて自分からその背中に腕を回していた。
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