愛を知る小鳥
「香月さん、食べないの? あと何か顔が赤いけど風邪でもひいた?」
「へっ、えっ?」
いつの間にか近くに立っていた成田に声をかけられ飛び上がるほど驚いた。昼になって自分のデスクで食事をとっていたが、いつの間にか頭がトリップしていたらしい。右手からはサンドイッチが今にも落ちそうな角度で踏みとどまっていた。
「あっ、大丈夫です! 寝不足でちょっとぼーっとしてしまって…」
まさか専務の裸を思い出して赤くなってましたなんて言えるわけがない。
「そう? なんかそんなに焦った姿の香月さんって珍しいね。新鮮~」
「ははは…」
もはや赤くなった頬を押さえながら苦笑いすることしかできなかった。その後頭をしっかり切り替え一日の業務を終えると、美羽はスマホを手にタクシーの手配をした。
『いいか、今日は絶対タクシーで帰宅すること。異論は認めない』
今朝出がけに潤から何度も念押しされたことだ。彼は今日出張で大阪に飛んでいる。本人は美羽を連れて行きたがっていたが、本社での業務が残っていたことと、潤一人で充分な内容だったため単身で向かった。明日は土曜日ということもあり一泊してもよかったのだが、本人は最終に乗ってでも必ず帰ってくると言い残していった。そして先程のセリフだ。
同居し始めてから一緒に帰らないのは初めてのことだった。普通であれば帰宅のためにタクシーを呼ぶなど考えられないことだが、彼が何故そうしろというのか、その意味がわかりすぎるだけに美羽は素直に従った。
運転手には悪いと思いつつ、念には念を押して出てすぐに乗り込めるように専務室の窓から車体が確認されてから部屋を出た。
エントランスを出てすぐ目の前に止まっているタクシーの姿にホッとしながら一歩踏み出した。
「美羽ちゃん」
「へっ、えっ?」
いつの間にか近くに立っていた成田に声をかけられ飛び上がるほど驚いた。昼になって自分のデスクで食事をとっていたが、いつの間にか頭がトリップしていたらしい。右手からはサンドイッチが今にも落ちそうな角度で踏みとどまっていた。
「あっ、大丈夫です! 寝不足でちょっとぼーっとしてしまって…」
まさか専務の裸を思い出して赤くなってましたなんて言えるわけがない。
「そう? なんかそんなに焦った姿の香月さんって珍しいね。新鮮~」
「ははは…」
もはや赤くなった頬を押さえながら苦笑いすることしかできなかった。その後頭をしっかり切り替え一日の業務を終えると、美羽はスマホを手にタクシーの手配をした。
『いいか、今日は絶対タクシーで帰宅すること。異論は認めない』
今朝出がけに潤から何度も念押しされたことだ。彼は今日出張で大阪に飛んでいる。本人は美羽を連れて行きたがっていたが、本社での業務が残っていたことと、潤一人で充分な内容だったため単身で向かった。明日は土曜日ということもあり一泊してもよかったのだが、本人は最終に乗ってでも必ず帰ってくると言い残していった。そして先程のセリフだ。
同居し始めてから一緒に帰らないのは初めてのことだった。普通であれば帰宅のためにタクシーを呼ぶなど考えられないことだが、彼が何故そうしろというのか、その意味がわかりすぎるだけに美羽は素直に従った。
運転手には悪いと思いつつ、念には念を押して出てすぐに乗り込めるように専務室の窓から車体が確認されてから部屋を出た。
エントランスを出てすぐ目の前に止まっているタクシーの姿にホッとしながら一歩踏み出した。
「美羽ちゃん」