愛を知る小鳥
「潤さん、今日はごめんなさい…私がうっかりしていたばかりに…」

寝室に入ると先に歩く潤の背中に向かって呟いた。きちんと顔を見て話すことができない。

「美羽、おいで」

優しく響いた声に弾かれるように顔を上げると、潤がベッドに腰掛けて穏やかな笑みを浮かべながら手を広げていた。涙を堪えながら迷わずその胸の中に飛び込むと、すぐにぎゅうっと力強く包み込んでくれる。広い胸に全てを預けていると、不思議なほどに恐怖心が和らいでいく。大きな背中に手を回すと、その温もりを全身に吸い込むように何度も何度も大きく息を吸った。

「本当にごめんなさい…」

「どうして謝る? お前は何もしていない」

「でも…んっ!」

言いかけた言葉はそのまま彼の中に飲み込まれる。すぐに侵入してきた舌に思考が全て奪われていく。目を閉じていても響いてくる絡みあう水音に、脳天まで痺れていくようだ。美羽は手に力を入れて必死でしがみついた。

「はぁはぁ…」

「お前のその顔は反則だな…俺じゃなければとっくに喰われてるぞ」

涙目で見上げる美羽と唇同士がくっつく距離で艶っぽく囁くと、再びその愛らしい唇に覆い被さった。





「美羽、明日デートしよう」

ベッドの中で寄り添いながら美羽がいつ寝てもおかしくないほど微睡んでいたところでふいに潤が口にした。

「デート…ですか?」

「あぁ。二人でゆっくり出掛けよう」

「…はい」

デートなんて生まれて初めてのことだ。美羽ははにかみながら頷くと、潤も優しく笑った。

「じゃあ明日に備えて早く寝ろ。おやすみ」

「おやすみなさい…」

今日の出来事もいつの間にか忘れ、美羽は穏やかな顔で眠りについた。
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