愛を知る小鳥
「これからどこに行くんですか?」

「腹減ったろ? 行き先は着いてからのお楽しみってことで」

そう言ってフッと笑うと、潤は緩やかに車を発進させた。美羽の瞳に映る景色全てが色鮮やかに輝いて見える。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。


さっき彼が言っていた言葉…
聞き間違いでなければいつか家族にって言った…?
こんな私がいつか家族をもつ?
これまで一度たりとも考えたこともなければ夢をもったこともない。
そんな私が家族をもてるのだろうか?

…でも、彼となら。彼となら、いつか…

高鳴る胸をそっと押さえながら、美羽は流れる景色を見つめていた。




「わぁ…綺麗ですね! ここは…?」

都心から車で2時間程で着いたのは、海の見える小高い丘にある洋風レストランだった。潤は美羽をエスコートしながら質問には何も答えず店内へと足を踏み入れていく。

「いらっしゃいませ…って、潤?!」

「あぁ、久しぶりだな」

店主らしき男性が潤の姿を見て驚きながら駆け寄ってきた。

「お前いつぶりだよ! 2年くらいか? ちょっとは連絡の一つくらい寄こせないのか___…ってあれ、こちらは?」

大きな潤の影になって見えなかった美羽に気づいた男性が驚いた顔をする。そして潤と美羽を交互に何度も見る。

「え、え? …まさか、お前…?」

「…あぁ」

潤は何故かふて腐れたような、不機嫌そうな顔をしてブスッと無愛想にそれだけ答えた。急に機嫌が悪そうになった彼を美羽は不思議に思うが、それに反比例して店主の男性は上機嫌になり、うんうんと頷きながら潤の背中をバシバシと叩いた。

「そっかそっか。お前がついに…」

「うるせーな。早く中に案内しろよ」
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