愛を知る小鳥
男性は美羽の方に向き直るとニッコリと笑い、手を伸ばしてきた。

「初めまして。私は三浦大成と言って彼とは高校・大学と同じだったんです」

「えっ、あっ、香月美羽と言います。専務の秘書をさせていただいています」

頭を下げて差し出された手におずおずと手を伸ばすと、すぐにギュッと握り返された。

「おい、専務じゃないだろ」

「え? あっ! ごめんなさい、潤さんでした…」

そんな二人のやりとりを大成はニヤニヤしながら見ている。

「へぇ~、『あの』お前がねぇ~…そっかそっか」

「…なんだよ」

「いやいや何でも~? じゃあ香月さん、こちらへどうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます…」

何が何だかよくわからないが、案内されるまま奥の席へとついて行った。


「こちらへどうぞ」

「わぁ…! 凄く素敵ですね!」

美羽が心から嬉しそうにそう言うと、大成も嬉しそうに顔を綻ばせた。

「うちの自慢の席なんですよ」

そう言われた場所は眼前に水平線が広がる、海を一望できる場所だった。美羽は窓際で外の景色に見入ると、満足したのかしばらくして振り返って言った。

「こんな素敵な場所に連れて来てくださって、ありがとうございます」

「あぁ。まぁとにかく座れ」

「はい!」

美羽が笑顔で席につくと、それに続いて座ろうとした潤の肩に大成が手を置いた。

「凄くいい子だな。安心したよ」

そう囁いてポンと叩くと、美羽にニッコリ会釈をして厨房の方へと下がっていった。
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