愛を知る小鳥
「ご友人のお店だったんですね」

「あぁ。あいつも俺と同じで親のレールに乗っからず自力でこの店を開いたんだ。時間ができたときにたまに顔出してたんだが、最近はそんな余裕もなかったからなんだかんだで2年ぶりくらいだな」

「そうなんですか。潤さんがこうやって会いに来るくらいだから、きっと素敵なご友人なんですね」

「友人と言うより悪友って言った方が正しいかもな」

照れ隠しからか悪態をつく潤に思わず笑いが零れる。

「おいおい、それはないんじゃないか? あんなに苦楽を共にした親友に向かって」

前菜を手にした大成がおどけた顔で潤を見下しながら、そのままテーブルに綺麗に並べていく。

「苦労しかした覚えがないけどな」

「ははっ、まぁ確かにな」

「おいしそう…!」

並べられた彩り鮮やかな料理に美羽の目が輝きを増す。

「こいつは中身はアレだが料理の腕だけは確かだから。たっぷり食え」

「アレだからって…お前にだけは言われたくないんだけど。香月さん、こいつの恥ずかしい話、色々聞きたい?」

「おいやめろ」

子どものようなやりとりにクスクスと笑いが止まらない。そんな美羽を優しく見つめながら大成が口を開いた。

「…真面目な話、こいつのことはずっと心配してたんだ。俺以上に苦労してるから、早くいい人でも見つけてそろそろ自分の幸せ掴めってずっと言ってたんだけど、全然そんな気配なくて。そのうち嫁じゃなくてお婿さん連れてくるんじゃないかって本気で不安だったよ」

「おい、何言ってんだ」

こめかみに青筋を立てる潤の姿は何ともレアだ。

「お互いを大切に思っていて素敵な関係ですね」

潤と大成を交互に見ながら微笑むと、そんな美羽を見て二人は互いに視線を合わせた。

「…お前は昔から本質を見抜く力だけはあったよな」

「当然だろ?」

強気な言葉に大成は苦笑いしながらも、嬉しそうにまた厨房へと引いていった。
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