愛を知る小鳥
「あいつは鼻で笑ってたよ。じゃあ俺は一生ここに女を連れてくることはないなって。実際今まで連れてくる気配の欠片すらなかったし」

大成は思い出しながら苦笑している。

「…でも今日こうやって君を連れてきた」

真っ直ぐ見抜かれる瞳に言葉が出ない。

「驚いたけど嬉しかった。そして君を見ていてその思いは強くなった。あいつが選んだ女性だけあるなって」

「そんな、私は何も…」

「自分じゃわからないかもしれないけど、あのあいつにあんな表情させるんだ。ただ者じゃないよ。鼻の下伸ばしてもう見るに堪えないったらなかったよ」

そう言って鼻の下を引っ張る大成に噴き出してしまう。
あぁ…この人は本当に潤さんのことを大切に思ってるんだ。今井さんといい三浦さんといい、彼にはかけがえのない仲間がいる。そのことが美羽にとっても堪らなく嬉しかった。

「あんなんだけど、根は真面目で優しい奴なんだ。だから、あいつのことを宜しく頼みます」

そう言って頭を下げた大成に美羽は慌てて立ち上がり、顔を上げるように懇願する。顔を上げた大成を見上げながら、美羽は軽く深呼吸をして言葉を紡いだ。

「いつも助けられているのは私の方なんです。私は迷惑をかけることしかできなくて…でも…でも。私でも何か彼の支えになれるのなら傍にいたいと思ってますし、彼にも傍にいて欲しいって思ってます」

強くそう言い切った美羽の目は少し潤んで真っ直ぐ強い力を放っていた。大成はそれが一見儚げに見える一方でとても頼もしく感じた。思わず美羽の頭に手を乗せると、優しく撫でながらニコッと笑った。

「潤の未来の奥さん、これからもよろしくね」

「なっ…!!」

突然の言葉に美羽は顔を真っ赤にして動けなくなる。

「おい、何してんだ」

戻ってきた潤の目に入ってきたのは美羽の頭に手を乗せて満面の笑みを見せる大成と、顔を真っ赤にして固まっている美羽の姿。たちまち眉間に深い皺が寄る。
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