愛を知る小鳥
「何触ってんだよ」

不愉快そうに大成の手を掴むとそのまま放り投げた。

「うわ、怖っ! 美羽ちゃんいいの? こんな嫉妬深い男で」

「おい、いつの間に美羽ちゃんなんて呼んでるんだよ」

「うわわわ、怖~っ! 独占欲全開男だよ? ほんとにいいの? やめるなら今のうちだよ」

自分の体を抱きしめながら身震いする大成がたまらなくおかしい。潤も彼の傍にいるときはすっかりペースを乱されっぱなしのようだ。笑いを堪えながらも美羽は大成に向き合った。

「はい。私は今の潤さんが大好きなのでそのままでいいんです」

その言葉に大成を小突いていた潤の動きがピタッと止まる。
ギギギ…とロボットが振り向くように美羽の方を見ると、驚愕の顔で固まっていた。大成はそんな潤を物珍しいものを見るような目で見つめ、ニヤニヤと締まりのない顔で笑った。

「…だって。良かったな、潤! お兄さんは嬉しいよ」

「っ、うるせーよ!」

慌てて背を向けた潤の顔は耳まで真っ赤だった。それを見た美羽も今自分が言ったことに我に返り、人前で何てことを言ってしまったのだろうと、今更ながら恥ずかしさのあまり真っ赤になった。そんな二人を面白そうに見比べながら、

「お前らとてつもなくお似合いだよ」

と言って大爆笑された。顔を真っ赤にしながら目が合うと、美羽と潤も思わず笑ってしまった。





「じゃあまたな。美味かったよ。ごちそうさん」

「あぁ。また来いよ。美羽ちゃん、今度は嫁さんもいる時にゆっくり遊びに来てね。あいつも絶対会いたがると思うから」

大成の妻は里帰り出産のため実家に帰省していた。

「はい。こちらこそまたお願いします」

「潤、絶対泣かすんじゃねーぞ」

「誰がだよ」

そう言って大成が差し出した手をパンッと叩くと、互いに無言で頷いた。美羽はそんな姿に男の友情を見た気がした。
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