愛を知る小鳥
「すごく素敵なお友達ですね」

座席の背もたれに寄りかかりながら美羽は楽しそうに口にする。すっかり日も暮れ外は真っ暗になっていた。

「素敵かどうかは疑問が残るがいい奴なのは違いないな」

「ふふっ、男の友情っていいなって思いました。私にはそういうのは縁がなかったので…」

少しだけ寂しそうに笑う美羽の右手を握ると、ハッとして顔を上げる。

「疲れた?」

「いえ、今日はいつもよりテンションが高いので大丈夫ですよ」

「フッ、じゃあもう少しだけ付き合ってもらっていいか?」

「はい」

頷く美羽を見ながら握った手にギュッと力を込めると、手を離し再び車を走らせた。



***


「ここは…?」

15分ほどで着いたのは周りに何もない真っ暗な峠のような場所だった。潤は助手席の扉を開けると美羽の手を取り外へと導いた。

「上見て」

「え? …っうわあ…! 凄い…っ!!」

そこには今にも落ちてきそうな程の星空が広がっていた。

「凄い…都心からそう遠くないところにもこんな場所があるなんて…」

「何度かあの店にいくうちにここに気づいたんだ。それからは来ると一人でここに寄ってた」

美羽は目をキラキラさせて星空を見上げ、時折手を伸ばしては星を掴もうとする。潤はそんな美羽を優しく見つめると、後ろから手を伸ばし小さな体を抱きしめた。

「…っ、潤さん…?」

驚いて振り向こうとするが、それを阻止するかのように頭の上に顎を乗せられてしまった。手を交差した場所から心臓がドクドクと早鐘を打っているのが伝わる。

「…さっき言ったこと」

「…え?」

「あいつに言ってたこと」

何のことを言わんとしているのかがわかった美羽は一瞬で体を固くしてあたふたし始めた。

「あっ、あれは…!」

「嬉しかったよ」

「え?」

「…すごく嬉しかった」
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