愛を知る小鳥
そう言って回した腕にギュッと力が込められた。美羽はその言葉に胸が締め付けられ、何故かはわからないけれど泣きそうな気持ちでいっぱいになる。唇を噛んでグッと堪えると、腕の中でなんとか体を動かして潤と向き合う形になった。
美羽を包み込むように潤が見下ろす。そんな潤をゆらゆらと揺れる瞳で美羽が見つめ返す。まるでそこだけ時間が止まったかのようだった。



「潤さんのことが好きです…」



美羽は静かに、ゆっくり言葉を紡いだ。潤が息を呑んだのがわかる。


「大好きです」


もう一度言葉にすると、想いと共に涙が溢れてきた。
その瞳が、涙が、吸い込まれそうなほど綺麗で、潤は身動きが取れなかった。
好きなんて言葉、これまで飽きるほど聞かされてきたが、ただの一度も何かを感じたことはなかったのに。女の涙ほど鬱陶しいものはなかった。感情を剥き出しにして、駆け引きのために利用される涙。自分が見てきたのはそんな涙ばかりだ。

だが今目に映っているのはどうだ。忌み嫌ってきたはずの涙に、まるでこれまでの自分の心が洗われていくようだ。愛する人に想いを伝えられるということが、こんなにも心を震わされるなんて、彼女に出会わなければ一生知ることはなかっただろう。
潤は微かに震える手で美羽の濡れた頬に触れると、そっと涙を拭った。濡れてキラキラと光る彼女の瞳は、頭上に広がる星空よりもずっと眩しい。

「ありがとう」

コツンと額を合わせてそう言うと、再びポロポロと涙が零れた。その体を引き寄せると、腕の中で「待たせてしまってごめんなさい」と懺悔する。そんな彼女が愛おしくてたまらない。背中に回した手に力を込めると、やがて自分の背中にも細い腕が回された。ギュッとしがみつかれたところから熱が広がっていく。



寄り添う二人のシルエットが星空の下に溶け込んでいた____
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