愛を知る小鳥

熱い…

美羽はソファーで膝を抱えるようにして座ったまま頬に手をあてた。
体が火照るように熱い。お風呂に入ったからだけじゃない。もっと、体の芯から燃えるような熱を感じる。

生まれて初めて誰かに想いを伝えた。
それは一生経験することはないことだと思っていた。
でも彼に出会って全てが変わった。彼は私が自分を変えたと言っていたけれど、彼もまた私の人生を反転させてしまった。

唇にそっと触れてみる。
あれから彼に貪るような口づけをされた。これまで何度も同じようなことはあったけれど、今日のはそのどれとも違っていた。少しも怖いだなんて思わなかった。そのまま流れに身を任せてしまおうかと思うほどフワフワと体が浮かされた。彼がいつもと違ったのか、それとも自分…?
…そうじゃない。二人とも変わったのだ。内に秘めた想いを互いが見せ合ったことで、もっと深いところで繋がれたのだ。

もうずっと殻に閉じこもっていた自分を彼は変えてくれた。それは無理矢理ではなく少しずつゆっくりと、気持ちに寄り添いながら。ありのままの彼を見せることで、頑なだった心を溶かしていってくれた。

私は彼に何を返せているのだろうか?
彼は全てをさらけ出してくれている。
私は…
私は…?



「今日は疲れただろう?ゆっくり休めよ」

ベッドに入りながら優しく語りかける潤に何の反応も示さず、美羽は何かを考え込んでいた。

「…美羽?」

様子がおかしいことに気づいた潤は体を起こして顔を覗き込む。深刻そうな顔で俯くその様子に、あれから短時間で何があったのかと訝しく思う。やがて美羽は目を瞑り大きく息を吸い込んだ。

「美…」

「潤さん」

大きな黒目が真っ直ぐに潤を捉える。


「……私の話を、…過去を聞いてもらえますか」


揺れる潤の瞳に映ったのは、覚悟を決めた美羽の姿だった。
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