愛を知る小鳥
「へぇ~、一人暮らしするためにバイトしてるんだ」

「はい。自立しようと思って」

「なんか凄いね。俺なんかまだ親のスネかじりまくりだって言うのに」

「いえ、多分うちがちょっと特殊なだけだと思います」

あの日以来、シフトが合えばこうして何かと話をするようになっていた。くだらない雑談から少し踏み入ったことまで、少しずつその距離を縮めて。友達すらまともに作る余裕のない美羽にとって、園田は初めてできた友人でもあり、良きお兄さんとなっていた。

「特殊って…何かあるの?」

「……」

「あ、ごめん。言いたくないなら言わないでいいよ」

「あ、いえ…何て言うか、私がいると母は幸せになれないから…」

「え?」

それだけ言って接客に戻ってしまった美羽を、園田はじっと見つめていた。



***

「美羽ちゃんって進学するの?」

「いえ、そんな余裕はないので就職しようと思ってます」

「えぇ~? 勉強できるのにもったいなくない? 奨学金とか利用して進学したら?」

「…」

それはここ最近ずっと悩んでいたことだった。成績優秀な美羽は教師からも全く同じ事を言われて進学を勧められていた。しかし大学に進学して学業と生活費を確保することに自信が持てないでいた。進学したいと言えば母は援助してくれるかもしれない。が、内心負担に思われるかもしれないと思うと、どうしてもそれを言い出せずにいた。
それほど昔の母の言葉は重しとなって美羽の心に存在していた。
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