愛を知る小鳥
「…どうした?」

色んな事があった週末がもうすぐ終わろうとしていた。
先にお風呂を終えた美羽が何かを考え込んだままじっとベッドに座っている。潤は半乾きの髪をガシガシと拭きながら、ゆっくりとその隣に腰を下ろした。

「…潤さん」

「ん?」

前を向いたまま名前を呼ぶと、美羽は次第に顔を潤の方へと向けながらゆっくりと、言葉を選ぶように口を開いた。

「…あの人は」

その言葉を聞いた瞬間潤の顔色が変わる。

「あの人は…」

「美羽」

膝の上で固く握られてた拳の上に大きな手が重なりギュッと力を込める。

「あの人は…私を恨んでいるんだと思います」

「美羽」

「あの時、もしかしたら殺してしまったかもしれないとすら思いました。でも私は…」

「美羽っ!!」

不安げに揺れる瞳ごと顔を包み込む。

「美羽、何度でも言う。お前の取った行動は正しいんだ。お前があの時何もしなければどうなっていた? お前は今以上にボロボロになってたんだぞ! 下手すれば本当にこの世にいなかったかもしれない。奴のやったことは完全な犯罪だ! お前の行動は正当防衛以外の何物でもない」

一度目を閉じて大きく深呼吸をすると、再び潤を見据えた。

「あの人は私に復讐したいのかもしれません」

「俺がさせない。絶対にお前を守ってみせる」

さらに力の込められた手を美羽も強く握り返す。

「潤さん…今まで私はあの人の影にただただ怯えるだけの毎日を過ごしていました」

「美羽?」

「いつあの人が現れるかもしれない。もしかしたら家に帰ったらいるんじゃないか、あの角を曲がればいるんじゃないか。…目を覚ませば目の前にいるんじゃないかって。常に恐怖でいっぱいだったんです」

「美羽…」
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