愛を知る小鳥
優しく包み込んでくれるこの広い胸が気持ちいい。
この腕の中にいれば全てのことを乗り越えられる。

「潤さん…」

「ん?」

「私…あんなことがあってから、人と触れ合うのは恐怖以外の何物でもなかった。でも、潤さんと一緒にいて、潤さんの優しさに包まれて、少しずつその恐怖が和らいでいったんです。潤さんの腕の中は温かくて、心地が良くて…。だから…だから…潤さんなら全てを忘れさせてくれるって、…そう思ってます…」

「…美羽?」

肩を掴んで顔を覗き込むと、恥ずかしそうに俯いて顔を上げようとしない。顎に手を添えてそっと上を向かせると、先程までとはうって変わって自信なさげに瞳が揺れている。ゆらゆら揺れる瞳で潤と目を合わせると、聞こえるか聞こえないかの小さな声で美羽が呟いた。

「いきなり全て…は無理かもしれません…でも…」

そこまで言って顔を染める美羽の体を再びギュッと抱きしめた。包まれた体はほんの少しだけ震えているだろうか。彼女にとってたったそれだけのことを伝えることが、どれだけの勇気を必要とすることなのか痛いほどわかる。潤は抱きしめる力をさらに強めた。

「美羽…わかったよ。わかった。…ありがとう」

しばらくそのまま抱き合うと、やがて潤はそっと美羽の唇にキスを落とした。
初めはただ触れ合うだけ。何度もそれを繰り返していると、次第に美羽の呼吸が速くなってくる。ほんの少し口が開いた瞬間を見逃さず、すかさずその隙間から舌を差し込んだ。美羽の体がぴくりと揺れる。だが徐々に体から力が抜けていき、微かに震える手をゆっくりと潤の背中に回してギュッと力を込めた。

「ん…ぁっ…」

それを合図にしたかのように潤の手に力が籠もる。後ろに倒れそうになる美羽の背中と頭をしっかりと支えるように押さえ込むと、燃え上がるほど激しくその唇を侵食していった。
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