愛を知る小鳥
「…あなたは…最初からそのつもりだったんですか…?」

「何?」

「私に優しくしてくれていたのも…全てそれが目的だったんですか…?」

悲しみを滲ませた瞳で今更なことを尋ねる美羽がおかしくてたまらない。園田は体を揺らして笑った。

「あははっ! 本当に美羽ちゃんっておめでたい子だね。何を今更そんなことを。この俺が相手にしてやるんだ。何か一つくらい楽しみがないとやってられないだろう? あの頃は毎日が糞つまらなくてね。うんざりしてたところで君に出会ったんだ。君は純真無垢を絵に描いたような人間で面白いったらなかったね。俺を完全に信じてるんだから」

あははっと声高らかに笑う園田がひどく遠く見える。
覚悟はしていたが面と向かってはっきり言われるとやはり胸に突き刺さるものがある。だが、今更そんなことはどうでもよかった。そんなことより早くこの場を切り抜けて潤の元へ帰らなければ。きっと彼は心配している。
美羽はそっと園田の様子を窺うと、体を揺らして笑っている隙をついて全速力で走り抜けた。

「待てコラァ!!」

だがすぐに園田が目の色を変えて追いかけてくる。

はぁはぁはぁっ…!
ドア目がけて必死で走る。走って、走って、走って。
ドアノブに手が触れた瞬間、無情にも後ろから伸びてきた手に首元を掴まれた。

「きゃあっ!!」

「つーかまーえたぁ」

園田は楽しそうに言うやいなや、首ごと美羽を床に投げ飛ばした。背中からもろに叩きつけられ、呼吸がまともにできない。

「ぐ…けほっけほっ!」

「美羽ちゃんってほんとに鬼ごっこが好きだよねぇ。でも今日こそは鬼が勝っちゃうよ?」

クスクス楽しそうに笑いながら、横たわる美羽にじりじりと近づいてくる。
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