愛を知る小鳥
「…何?」

反抗されるとは夢にも思っていなかったのか、園田の顔が凍り付く。

「あの時の私には身を守る術があれしか残されていませんでした。だから間違ったことはしていません」

「黙れぇっ!!」

バシィッ!!
右頬に平手打ちが入った。信じられない程頬は痛み、口の中は血の味がしてくる。あの時と同じだ。全てが同じ。
でも、絶対に負けたくない…!
美羽は強い目で園田を睨み返した。

「何だその目はァ!!」

ガッ!!
今度は反対側に拳が振り下ろされる。先程とは比べものにならないほどの激痛が走り、美羽の意識は飛びそうになる。だが潤の顔を思い出して必死で踏みとどまる。
彼が未来を教えてくれた…
彼が強くなることを教えてくれた…
絶対に負けたくない…!!
痛みで滲んでくる涙を唇を噛みしめてグッと堪える。

「へぇ…その強気もいつまでもつかな…?」

そう言うとスーツの襟元に手を伸ばし、そのまま凄まじい力で引き裂いた。ブチブチブチッと部屋中にボタンが飛び散る。さらにシャツにも手をかけ、勢いのまま引き千切る。無残に破られた布を投げ捨てると、露わになった白い肌に手を伸ばした。

「へぇ…こんな跡までつけちゃって。お前もやるねぇ。…気に入らねぇなぁ」

手の触れた先には夕べ潤がつけた跡がくっきりと残されていた。今日のことで不安になる美羽を宥めるように、優しく優しく愛してくれた。
園田は指先でそれをなぞると、思いっきりその場所に食い付いた。

「う、あっ…!!」
< 206 / 328 >

この作品をシェア

pagetop