愛を知る小鳥
「てめぇっ!!」

激しく開いたドアから飛び込んで来た影は、脇目も振らず園田の腹目がけて蹴りを入れた。

「ぐわぁっ!!」

完全に意表を突かれた形の園田の体は数メートル先まで吹き飛ばされる。潤は追いかけるとさらにもう一発蹴りを入れた。抵抗する間も与えず押さえ込んで顔面にも数発殴打を加えると、悲鳴を上げた園田はその場でうずくまり、脇腹を押さえながらゲホゲホと苦しそうにもがき始めた。


「美羽っ!!」


急いで横たわったままの美羽の元へと駆け寄る。そこで見たのは思わず目を逸らしたくなるほどひどい有様の彼女の姿だった。両頬はひどく腫れ上がり、口の脇からは血が流れている。衣服は無残に引き千切られ、胸元にはひどい噛み跡があり血が滲んでいた。首筋には男のつけた指の跡がくっきりと残されている。
当の本人は青白い顔でグッタリとして動かない。

「美羽っ、美羽っ…!!」

激しく動かさないようにそっと抱き起こすと、その胸に耳をあてる。


トクントクン…


生きていることを確認した途端、激しい後悔の念が押し寄せる。
何故彼女を一人にしてしまったのか。
何故、何故…!!

「美羽、すまない、すまない…!!」

泣きそうなほど顔を歪ませながら美羽の体をきつく抱きしめた。ギュウギュウと、その胸の中に閉じ込めるように。万が一彼女に何かあったら、自分はもう生きていけない。
震える体で必死に抱きしめた。



「…………じゅ…さ…」

「___美羽っ?!」

腕の中から微かに聞こえた声にガバッと体を起こす。するとほんの少しだけ目を開いてこちらを見ている彼女と目が合った。
< 209 / 328 >

この作品をシェア

pagetop