愛を知る小鳥
「美羽ちゃんっ…!!」

潤を追いかけてきたあかねが美羽の姿を確認するなり悲鳴を上げた。

「ひどい…どうしてこんなことにっ…!」

美羽の元まで歩み寄ってくると、堪えきれなくなった涙が次から次へと溢れていく。潤の腕の中に包まれながら、美羽はあかねに顔を向けるとゆっくりと微笑んだ。

「美羽ちゃんっ…ごめんなさいっ、私がきちんとあなたのそばにいればこんなことにはっ…」

しゃがみ込んでむせび泣くあかねに首を振る。

「あかねさ…ありがとう…」

「美羽ちゃ…!!」

美羽の手をぎゅっと握ると、そこに顔を擦りつけてわぁわぁと泣き始めた。


美羽は幸せを感じていた。
殺されかけたのに、自分は幸せ者だと感じていた。
自分のことを思って涙を流してくれる人がいる。
こんなに幸せなことがあるだろうか。
先程までの苦しみや痛みも忘れ、今はただ温かさだけを感じていた。





「フッ……フハハハハハハハハハハっ!!!」





突如静寂を切り裂くような笑い声が部屋中に響き渡る。
潤は体を引き起こして振り返ると、先程まで悶絶していた園田がよろよろとその体を起こそうとしているのが見えた。美羽に自分のスーツの上着をかけると、ゆっくりとあかねにその体を託す。

「じゅ…さ…?」

「大丈夫だよ、美羽」

不安げに見上げる美羽に優しく微笑むと、ぎゅっと手を握りしめてから立ち上がった。そしてゆっくりと振り返ると、一歩ずつ足を進めていく。
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