愛を知る小鳥
番外編

木漏れ日の中で

「美羽、そろそろ行くぞ」

「はいっ」

部屋の片付けをあらかた終わらせると、美羽は潤の待つ玄関へと急いだ。

「忘れ物はないか?」

「大丈夫です」

エレベーターを降り地下駐車場へ向かうとスマートに潤が美羽をエスコートする。いつもの風景だが、いつまでたっても美羽は慣れそうにない。

「あ、ありがとうございます」

ほんのり頬を染めてお礼を言うその姿がたまらなくて、潤も半ば楽しみながらやっているのだが。

「奥さん、どんな方なのか楽しみです」

「あいつは…かなりグイグイ来るから覚悟しておいた方がいいぞ」

「グイグイ…ですか?」

「あぁ。まぁ会えば嫌でもわかるさ」

潤の滑らかな運転で向かう先。そこは三ヶ月ぶりに行く場所だ。
あのプロポーズから二ヶ月。あれからそう待たずして二人は入籍した。
それは潤のたっての願いだった。

美羽にああいう悲劇が起きてしまったことを、潤は誰よりも悔いていた。
彼女を法的にも守れるように、一日も早く籍を入れたいとずっと考えていた。
美羽は潤の強い意志に驚きはしたがそれをすんなり受け入れ、晴れて二人は夫婦となった。小さい頃から親の愛情をほとんど受けずに育ってきた二人が、初めて家族という存在を手にした瞬間だった。
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