愛を知る小鳥

突然の訪問者

大成達を尋ねてから早くも一ヶ月が過ぎていた。
結局、相談した結果パーティは二ヶ月後にすることに決まった。美羽達だけでなく、秘書課の面々も仕事が立て込んでいることもあり、それらが落ち着いた頃にやろうという話になったのだ。初夏を迎える頃で、気候的にもちょうど良かった。

入籍してからも美羽は変わらず仕事を続けていた。はじめこそ理不尽な異動だと思っていたが、信頼のおける仲間との仕事は、美羽にとってもやりがいのあることとなっていた。また、公私ともに潤を支えられることがこの上ない幸せでもあった。

例のお堅いスタイルも健在だ。もう自分を偽る必要はない。
だが、いつの間にかそれが自然体となっていることに気が付いた。男性がスーツを着ると仕事モードに切り替わるように、美羽にとってはあのスタイルを決めることで仕事へとすんなり入っていけた。言わば戦闘服のようなものだ。
図らずとも美羽がそれを望んだのだが、それは潤にとっても内心有難いことだった。
元来美羽は素材はいいのだ。小柄で色白、大きな黒目につやつやの黒髪、そして何よりも本人の真面目で控えめな性格。男性を惹きつける要素はこれでもかと持っている。

本人は全く自覚はない。だが潤と出会い愛されるようになったことで、これまでにはなかった内から出てくる自信のようなものが目に見えるようになった。それは美羽が偽りの姿をしていても溢れ出てくるほどに。

いつからか仕事で男性と接するときに相手の見る目が変わってきた。
要はモテるのだ。これは潤しか気付いていない。
美羽が自分しか見ていないのはわかっていても、他の男がそういう目で見ているのは正直面白くない。だから美羽が結婚後もスタイルを変えたくないと言ってきたときは内心ほっとしたものだ。

…もちろん美羽には内緒だが。
< 269 / 328 >

この作品をシェア

pagetop