愛を知る小鳥
美羽がポケットからハンカチを取り出してそっと震える手に握らせると、亜紀は涙でぐちゃぐちゃになった顔で美羽を見上げた。

「たとえすれ違っても、何度でもやり直すチャンスはありますよ」

「美羽さん…?」

「私も自分の人生をずっと諦めていたんです。でもそれを変えてくれたのは他でもない潤さんでした。ずっと真っ暗だった私の人生が、彼と出会ったことで変わったんです。彼もそうだって言ってくれました。だから命ある限り、人生はいつでも変えられるチャンスはある。私はそう思ってます」

優しく微笑むと、一時だけ止まっていた涙が再び溢れ出す。
美羽はそんな亜紀を見つめながら、心が温かくなるのを感じていた。

潤は高校卒業と同時に家を出たと言っていた。彼女が仮に二十歳だとして、最後に会ったのはもう14年近く前のことだろう。そんな小さな頃の記憶を頼りに、ずっと潤の事を思っていたのだ。
彼は決して一人なんかじゃなかった。会おうと思えばこうして会えるかけがえのない家族がいる。

「すみません、こんなに泣いてしまって…」

ハンカチで目を押さえながら恥ずかしそうに笑う姿がとても愛らしかった。

「気にしないで下さい。…でも嬉しかったです。彼にはこんなに素敵なご家族がいるんだってわかって」

「美羽さん…」

「とりあえず彼には私から話してもいいですか? いきなりだと彼も戸惑う可能性もあるので…。でも彼はきっとわかってくれます。だから信じて待っててもらえませんか?」

美羽が優しく語りかけると、亜紀は安心したようにほっと胸を撫で下ろした。
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