愛を知る小鳥
「…私、安心しました」

「え?」

「ずっと、兄はあれからどうしてるんだろうって思ってました。大きな企業の役職に就いたということは知ってました。でも兄個人として幸せでいるのか、ずっとずっと気になってたんです。小さい頃の記憶しかないけど、兄が私たちにとても優しくしてくれたのは覚えてます。だからこそ私たちのせいで家を出たんだって思ったらいてもたってもいられなくて…。でも今更会いに来る資格なんかないって…」

「……」

「でも今日こうして勇気を出して来てよかったです。あなたみたいな素敵な奥様がいるんだってわかって嬉しかった」

「亜紀さん…」

「美羽さん、これからもどうか兄をよろしくお願いします」

そう言うと亜紀は深々と頭を下げた。

「そんな、亜紀さん、顔を上げて下さい!」

ゆっくりと顔を上げた亜紀の目には涙が浮かんでいた。
それを見つめる美羽の目にも。
二人はそっくりな互いの姿を見て笑いあった。


予期せぬ訪問者は、とても温かい時間を運んでくれた。
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