愛を知る小鳥

雪解けの時

その日は朝から穏やかな日射しが降り注いでいた。

「大丈夫ですか?」

美羽は自分よりも随分上にある潤の顔を覗き込んだ。

「…俺は子どもじゃないぞ」

不服そうに拗ねてみせる姿が子どもみたいで可愛い、なんて口が裂けても言えない。

「ふふっ、そうですね。じゃあ行きましょうか」

「あぁ」

潤がスッと横から手を握ると、美羽も嬉しそうに笑ってその手を握り返した。そうして車を停めた場所から待ち合わせの場所まで、二人は並んで歩き出した。




指定されたカフェの扉を開けて店内へと入る。お店の奥でこちらに気付いた影がすぐに動いたのがわかった。
一瞬だけ潤の足が止まる。


「潤さん」


美羽が握っていた手に力を入れると、潤は我に返ったように頷いた。そしてゆっくりと店の奥へと進んでいく。そこには三人の男女が立っていた。
やがて彼らの前で立ち止まると、今にも泣きそうになっている女性が口を開いた。

「…潤兄さん…?」

「……あぁ。亜紀か? 大きくなったな」

潤が微笑むと、亜紀の瞳から大粒の涙が溢れ出した。

「潤兄さん……会いたかったっ…!」

顔を覆ってわんわん泣き始めた亜紀の頭を、潤はそっと優しく撫でた。

「勇気を出して会いに来てくれてありがとう。…嬉しかったよ。お前達にも心配かけて悪かった」

そう言われた男性二人もどこか涙ぐんでいるように見える。
どんなに長い年月を隔てようとも、そこには確かに家族の愛があった。
美羽は滲んで見えなくなるその姿を、しっかりとその胸に焼き付けた。
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