愛を知る小鳥
それから五人でゆっくり話をした。
上の弟の遼は医者になるべく医大に通っていること。
下の弟の康介は来年高校を卒業し、将来はシステムエンジニアを目指していること。
妹の亜紀はもうすぐ成人を迎え、大学に通っていること。
家族なら誰でも知っているようなことを初めて互いに話し合った。その場には最初のような緊張感はもうどこにもなかった。

美羽はそんな四人の様子を見守りながら、やはり彼らは紛れもない兄弟なのだと実感していた。見た目だけではなく、それぞれが醸し出す空気感がどことなく似ていたから。共に生活した時間は短かったはずなのに、自然と似ていることが微笑ましく思った。

「遼、お前が医者を目指してるのはもしかして、俺の…」

潤が申し訳なさそうに口を開きかけると、遼はすぐに首を横に振った。

「それは違うよ、兄さん。親父は兄さんが出て行ってから俺に対して医者になれって言ったことは一度もない。…きっと後悔してたんだろうと思う。だから俺が医者を目指してるのは誰でもない、自分の意思で決めたことだから」

その強い言葉にどこか安心したように頷くと、潤は嬉しそうに笑った。

「そうか。それならいいんだ。俺のせいでお前達の人生を変えるわけにはいかないからな」

「兄さんこそ幸せなの? …まぁ聞くまでもないと思うけど」

康介がちらりと美羽の方に目線を送る。

「あぁ。見ての通り幸せに暮らしてるよ。だからもう俺のことを気に病んだりしないでくれ。それに、もともと家を出たのはお前達の責任でも何でもないんだ」

潤がはっきりそう言い切ると、三人はどこか肩の荷が下りたように笑って頷いた。
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