愛を知る小鳥
「美羽は芯から純粋な奴なんだよ。この俺すら変えてしまうくらいにな」

「ははっ、俺すらって。不純だったのは認めるんだ」

それまで黙っていた遼まで思わず吹き出してしまった。潤は我ながらしまったとコホンと一息つくと、三人の顔を交互に見た。

「まぁとにかく、これからはいつでも気兼ねなく会いに来ればいいし、俺もまたいつか家に顔を出すよ」

「絶対に? 約束だよ?!」

「あぁ」

必死で約束を迫る亜紀に潤は大きく頷いた。

「じゃあ俺たちはこれから病院に向かうから」

「うん。お父さんのこと…よろしくお願いします」

「あぁ、わかってる」

少し涙ぐんだ亜紀の頭をポンポンと叩くと、笑顔で手を振って別れた。




「…素敵なご兄弟ですね」

「あぁ、そうだな。あいつらと過ごした時間は短かったけど、それぞれ立派に育ってて嬉しかったよ」

「ふふっ、そのセリフってなんだかすっかりおじさんみたいですね…って、あっ!」

余計なことを言ったとすぐに口を押さえたが、バッチリ潤に聞こえてしまった。
横から痛い視線を感じる。

「ん? 何か言ったか?」

「い、いえ、何でもありません…」

誤魔化すように必死に首を横に振ると、予想に反して潤も優しく笑ってくれたので、美羽はほっと胸をなで下ろした。
次の瞬間、

「今夜はお仕置きだから覚悟してろよ?」

「……えっ?!!」

耳元でそう囁くと、お決まりのように美羽が真っ赤になって固まる。全ては予定通りとばかりに手を握ると、潤は硬直したままずるずると引き摺られるだけの美羽をしたり顔で見ながら歩いて行った。
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