愛を知る小鳥
「お兄ちゃん、美羽さん、おめでとうございます。…美羽さん、凄く綺麗です」

二人の元に亜紀がやって来るなり、美羽にうっとりと見とれている。

「亜紀さん、今日はわざわざ来てくれてありがとう」

「そんな! こちらこそ呼んでもらえて本当に嬉しかったです。両親や兄もよろしく伝えて欲しいって言ってました」

「親父の経過は良好なのか?」

「うん。もう歩いたりしてリハビリも始まってるよ。早く職場復帰するんだって張り切ってる」

「…そうか」

潤は安心したように微笑んだ。
あれから、潤との再会を果たしてからすぐに手術は行われた。手術は6時間に及んだが無事に成功し、経過は良好とのことだった。潤との思わぬ再会を果たし、亜紀が言うには今凄まじいやる気に漲っているんだとか。現場に復帰するのもそう遠くない未来だろう。
潤も美羽も心から安堵していた。


「藤枝君、美羽さん」


声のした方に振り向けば今井がこちらへ来るところだった。

「今井さん、今日はありがとうございます」

美羽も潤も揃って頭を下げると、今井はくしゃっと目尻を下げて優しく微笑んだ。

「いや、こちらこそありがとう。入籍の報告を受けたときは驚いたが、こうなるのは最初から予想していたからね。美羽さん、彼をこれからもよろしく頼みます」

美羽は初めて食事した時のことを思い出していた。
あの時から彼は既にこうなる未来を思い描いたのだと思うと胸が熱くなる。

「はい。これから一生かけて彼を精一杯支えていきます」

「うんうん、君なら安心して任せられるよ。藤枝君も良かったな、彼女に出会えて」

「はい。今井さんには感謝しかありません。ありがとうございます」

「まぁまぁそんなにかしこまらずに、な!」

ガハハと笑う今井はこれまでと変わることなく慈愛に満ち溢れていた。
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