愛を知る小鳥
楽しい時間もあと少しで終わりを迎えようとしていた頃、厨房から大成と共に立派なウエディングケーキが出てきた。料理の締めにスイーツはお願いしていたが、ウエディングケーキ自体は頼んでいなかったため、美羽も潤も驚きを隠せない。
三段重ねになっているケーキの一番上にはタキシードを着た潤とドレス姿の美羽のマジパンが乗っていて、シンプルながらどこか可愛らしさの残るケーキだった。
大成はケーキを二人の目の前まで運ぶと、笑顔で話し始めた。

「え-、本当はこのようなケーキの依頼はなかったんですが、これは親友へ私からのほんのささやかなお祝いの気持ちです。潤、美羽ちゃん、本当におめでとう」

突然のことに驚きは隠せないが、美羽は慌てて大成に頭を下げた。

「私の親友である彼は昔から何でもできる男でした。色んな苦しい逆境も経験してきたのを見ていますが、常に己の力でそれを乗り越えてきた、そういう凄い奴なんです」

「大成…」

普段なら絶対に言わないようなことを口にする親友に次の言葉が出てこない。

「でも女にだらしないのだけが玉に瑕。いい加減ちゃんとしろと散々忠告してきましたが、いつまで経ってもそれは変わることなく、このまま一生独身なのを覚悟していました。…あとはある日突然お婿さんがくるかもしれない覚悟も」

その言葉に会場がドッと沸く。

「とまぁ冗談は抜きにして、親友として正直もう諦めていました。この男を結婚させるのは無理なんだと。…でもある日突然彼女を連れてきた」

大成は優しい眼差しを美羽に向けた。
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