愛を知る小鳥
記念日をあなたと
「亜紀さん、皆さん…お世話になります」
深々と頭を下げた美羽に、亜紀がぶんぶんと手を振って笑い声を上げる。
「美羽さんったらそんなに気にしないでくださいよ! うちの家族みーんな子ども達が来るのを楽しみにしてたんですから! ここだけの話、お父さんなんてこっそり新しい絵本まで準備しちゃってるんですよ? 本人はばれてないつもりみたいですけど、全く隠せてないんですよね」
「え…」
「いかにもあの父親らしいと思いませんか?」
「…ふふっ。そうだね」
普段は威厳のある雰囲気を漂わせている彼が、一体どんな顔をしながら本を選んだのかと想像するだけで微笑ましくなってしまう。
「こんなことでもないとゆっくり遊べないし、お兄ちゃん達だって夫婦水入らずで過ごせる時間もないでしょう? それに、うちの子だって今日会えるのをすごく楽しみにしてたんですよ。お互いにとっていいことづくしなんだから、今日くらいは2人でゆーっくりしてきてくださいね!」
「亜紀さん…ありがとう」
「じゃあ悪いけど、あとのことは頼んだぞ」
「まかせておいて! じゃあ皆、パパとママにいってらっしゃいしようね」
「ぱぱ、まま、いってらっしゃ~い!」
「っしゃぁ~い!」
亜紀に肩を抱かれた子ども達がニコニコと可愛らしく手を振っている。その姿に思わず「行かない!」と叫びたくなるが、せっかく贈られたこの時間を無駄にはしまいと、潤と美羽も負けじと元気よく手を振った。