愛を知る小鳥

「じゃあ行こうか」

「…はいっ!」

それでも、こうして愛する人と二人だけの時間を過ごせるのは嬉しい。

ほんの少しの寂しさは、瞬く間に喜びへと色を変えていった。


そんな二人が最初に向かったのは美術館。
子連れではなかなか足を運ぶことができないその場所は、今最新鋭のアートグラフィック展が催されていることもあって、かなりの盛況ぶりだった。

「わ、結構混んでますね」

「そうだな。はぐれないように気をつけろよ」

「はい」

そう話す二人の手はずっと繋がれたまま。

若いカップルでもないのに人前で手を繋ぐなんて…と思わないわけではない。
けれど、今だけは周囲の目など気にせず二人の時間を心から楽しみたい。

言葉などなくともそれが互いに伝わってきて、それを証明するかのように絡ませた指に力を込めあった。

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