愛を知る小鳥
「今日はこれくらいで充分だろう。そろそろ帰るか」
あれから一通り挨拶回りを済ませると、潤がおもむろにそう口にした。
「はい。専務はタクシーでお帰りですよね? 私は電車で帰りますのでホテルのエントランスで失礼させていただいても宜しいでしょうか?」
「何言ってんだ、お前もタクシーで送るよ。もうこんな時間だしな」
「いえ、私は電車で大丈夫です」
「駄目だ。これは業務命令だ」
「…わかりました。ではクロークに預けた荷物を取りに行ってきてもよろしいでしょうか」
「あぁ、俺はロビーで待ってるよ」
そう言うと踵を返して会場を後にした。
美羽はその後ろ姿を見つめながら思わず溜息をついた。
(一人で帰りたいのに…)
自分を気遣ってのことだろうと思うとその申し出を無碍にもできず、渋々その言葉に従うことにした。クロークに預けていた荷物を受け取るとエレベーターホールに向かったが、パーティから帰る人で混雑していたため歩いて降りようと階段へと移動した。
「あなた潤の何なの?」
だが階段を半分ほど降りたところでふいに声がかけられた。
振り返るといつの間にか先程潤にあしらわれていた薫という女性が立っている。
あれから一通り挨拶回りを済ませると、潤がおもむろにそう口にした。
「はい。専務はタクシーでお帰りですよね? 私は電車で帰りますのでホテルのエントランスで失礼させていただいても宜しいでしょうか?」
「何言ってんだ、お前もタクシーで送るよ。もうこんな時間だしな」
「いえ、私は電車で大丈夫です」
「駄目だ。これは業務命令だ」
「…わかりました。ではクロークに預けた荷物を取りに行ってきてもよろしいでしょうか」
「あぁ、俺はロビーで待ってるよ」
そう言うと踵を返して会場を後にした。
美羽はその後ろ姿を見つめながら思わず溜息をついた。
(一人で帰りたいのに…)
自分を気遣ってのことだろうと思うとその申し出を無碍にもできず、渋々その言葉に従うことにした。クロークに預けていた荷物を受け取るとエレベーターホールに向かったが、パーティから帰る人で混雑していたため歩いて降りようと階段へと移動した。
「あなた潤の何なの?」
だが階段を半分ほど降りたところでふいに声がかけられた。
振り返るといつの間にか先程潤にあしらわれていた薫という女性が立っている。