愛を知る小鳥
「…香月、お前本当に自分で転んだのか?」
「…どういうことですか?」
「階段で何かあったんじゃないのか? もしかして、薫…」
「私が足を踏み外してしまったんです。専務を待たせてはいけないと急いでいたのでうっかりしていました」
潤の言葉に被せて美羽はそう言い切った。
その様子で潤は全てを悟る。美羽は転んだのではなく突き落とされたのであろうと。そしてそれは薫がやったことだということも。だが美羽は決して口を割ろうとはしない。自分に余計な気苦労をかけないためか、それとも…
だがどういう理由であれ彼女が真実を話すことはないだろう。
そう考えた潤はこれ以上美羽に聞いても意味がないと判断し、問題は自分で処理しようと頭を切り換えた。
「悪かったな」
「専務が何故謝る必要があるのか私には全くわからないです」
予想通りの答えが返ってきて潤は一人苦笑する。美羽は少しも動揺を見せることなく前を見据えたまま。先程真っ青になっていた顔色も幾分かましになっているように見える。
潤はそんな横顔を見つめながら、あまり深く考えずに顔を覗き込むように美羽の目の下へと手を伸ばした。だが次の瞬間、それに気づいた美羽の肩が大きく跳ねる。
あまりにも大きく反応されたので美羽以上に潤の方が驚いてしまった。
「…悪い。さっきやけに顔色が悪かったから気になったんだ」
「あ…本当にもう大丈夫ですから。ご心配おかけしてすみません」
「…ならいいんだが。とにかく無理はするなよ」
「はい」
それだけ答えると美羽はまた前を向いてしまった。ほんの一瞬でまた少し顔色が悪くなったように見えるのは気のせいだろうか。それにあの驚き方…そういえば昨日も頭に手を置いた瞬間にやけに大袈裟に反応されたのを思い出した。別に取って食うわけでもないのにあんなに大きく反応するものだろうか?
潤は何か煮え切らない感情に包まれながら、窓の外に目を移し背中で美羽の気配を感じていた。
「…どういうことですか?」
「階段で何かあったんじゃないのか? もしかして、薫…」
「私が足を踏み外してしまったんです。専務を待たせてはいけないと急いでいたのでうっかりしていました」
潤の言葉に被せて美羽はそう言い切った。
その様子で潤は全てを悟る。美羽は転んだのではなく突き落とされたのであろうと。そしてそれは薫がやったことだということも。だが美羽は決して口を割ろうとはしない。自分に余計な気苦労をかけないためか、それとも…
だがどういう理由であれ彼女が真実を話すことはないだろう。
そう考えた潤はこれ以上美羽に聞いても意味がないと判断し、問題は自分で処理しようと頭を切り換えた。
「悪かったな」
「専務が何故謝る必要があるのか私には全くわからないです」
予想通りの答えが返ってきて潤は一人苦笑する。美羽は少しも動揺を見せることなく前を見据えたまま。先程真っ青になっていた顔色も幾分かましになっているように見える。
潤はそんな横顔を見つめながら、あまり深く考えずに顔を覗き込むように美羽の目の下へと手を伸ばした。だが次の瞬間、それに気づいた美羽の肩が大きく跳ねる。
あまりにも大きく反応されたので美羽以上に潤の方が驚いてしまった。
「…悪い。さっきやけに顔色が悪かったから気になったんだ」
「あ…本当にもう大丈夫ですから。ご心配おかけしてすみません」
「…ならいいんだが。とにかく無理はするなよ」
「はい」
それだけ答えると美羽はまた前を向いてしまった。ほんの一瞬でまた少し顔色が悪くなったように見えるのは気のせいだろうか。それにあの驚き方…そういえば昨日も頭に手を置いた瞬間にやけに大袈裟に反応されたのを思い出した。別に取って食うわけでもないのにあんなに大きく反応するものだろうか?
潤は何か煮え切らない感情に包まれながら、窓の外に目を移し背中で美羽の気配を感じていた。