愛を知る小鳥
4 デジャブ
「おはようございます。昨日はありがとうございました」

いつも通りの決まった時間、美羽は専務室にやってきて頭を下げた。それは今までとなんら変わりはなく、昨日のこともなかったかのように完璧な日常の風景だった。

「あぁ。昨日痛めたところは?」

「多少痛みは残りますがテーピングもしていますし、病院に行く必要はありません」

「…本当か?」

「はい。全く痛みがないわけではないので多少動きは鈍くなるかもしれませんが、生活を送る上で全く問題はありません」

その言葉の真意を探ろうとじっと美羽の目を見据えたが、微動だにすることなく真っ直ぐ見つめ返され、それ以上追求することをやめた。本当ならば無理矢理にでも病院に行かせたいところだが、それを躊躇わせる何かが美羽にはあり、しばらく様子を見守ることにした。

(彼女のことだ、本当に無理なことは無理と判断できるだろう…)


「わかった。君の言葉を信じることにする。だがくれぐれも無理は禁物だ。何か異常を感じたらすぐに申告すること」

「はい、わかりました」

一礼して部屋を去って行く美羽の後ろ姿を潤はじっと見つめていた。
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